「私のスポーツダーツプロジェクト」 京都・プロダーツ選手編

「私のスポーツダーツプロジェクト」は、ダーツを使った福祉活動や交流会、街の活性化など、さまざまな問題の解決に向けてすでに活動を行っている「先輩」を紹介する企画です。
詳細はコチラ。あなたのスポーツダーツプロジェクトのご応募、随時お待ちしております!

小学生向け放課後デイサービス施設と、ダーツカフェがコラボ!

藤原徹也選手

第1回は、プロダーツプレイヤー・藤原徹也選手の「スポーツダーツプロジェクト」を紹介します。2019年度の国内プロツアーJAPANでは、年間ランキング2位という上位成績をおさめた藤原選手。ダーツの練習に打ち込むだけでなく、こんな素晴らしい活動もされています。

「藤原選手のスポーツダーツプロジェクト」
・元々仲のいい自閉スペクトラム症(※10/6:現在の一般的な呼称に変更いたしました)のお子さんにダーツをプレイしてもらった。すると、態度や性格の面でめざましい成長が感じられた。

・発達障害・ADHD・自閉スペクトラム症などの症状を抱える子どもの「療育」に、ダーツは向いているのでは? という可能性を見出した。

・京都府宇治市にある「放課後等デイサービスきぼうの木」と「ダーツカフェ ガーデン京都店」のコラボ企画を開始。発達障害などの症状を抱える子どもたちにダーツを教えるようになった。

自閉スペクトラム症のお子さんの成長が、企画をひらめかせた

– この企画を始めた、一番のきっかけを教えてください。

 すべてのきっかけは、僕の妻がもともと「療育」の現場で働いていたことですね。療育とは、障害のある子どもの発達をうながし、自立して生活できるように援助することをいいます。

 そのときに施設に通われていた自閉スペクトラム症のAくん(当時4歳)と仲良くなりました。妻が現場を離れてからも、Aくんの親御さんの許可を得たうえで、僕たちの家やお店に遊びに来てもらっていました。お店ではもちろんダーツでプレイしていたんですが、その様子を見てダーツは「療育」に向いているんじゃないかとひらめいたんです。

「療育」に向いている、と思ったのはどんな部分ですか?

 まず、ダーツは勝ち負けがありますよね。ダーツを始めたばかりの頃、Aくんは負けると泣いてしまう子でした。勝ち負けにこだわりがあり、気持ちの切り替えが難かったようです。しかし、回数を重ねる上で「負けても、次がある」「今度は勝ちたい」「あと何点取れば勝てる」と、どんどん壁を乗り越えてのめり込んでいったんです。負ける⇒もうやらない、ではなく、次にどうしたらいいかを少しだけうながすことで、もっとダーツやりたい! とAくんは意欲的になっていきました。

 そんなことが何回か続いたのちに、驚いた出来事があったんです。Aくんが、僕の点数を褒めてくれたんですよ。Aくんは僕を「てっちゃん」と呼ぶのですが、「てっちゃん、カウントアップで1000点超えるんだよ。すごいね」とお母さんに話してくれたそうです。

 ダーツをすることでAくんは泣かなくなり、我慢ができるようになり、さらに相手を褒める・認めることができるようになりました。そんなAくんの成長の姿そのものに、「ダーツで療育」の可能性を見出したんです。

偶然の出会い、お客さんが福祉施設の職員さんだった

– 「放課後等デイサービスきぼうの木」さんとは、どのようなきっかけで繋がりができたのでしょうか?

 僕のお店(ダーツカフェ ガーデン京都店)に、たまたま「きぼうの木」のスタッフさんが来店されたのがきっかけです。店長である僕の妻が、たまたまお仕事の内容をうかがったところ意気投合。そこから、「きぼうの木」を利用している子どもたちにダーツを教える「療育」企画ができないか、トントン拍子に話が進んでいきました。

ダーツを楽しみながら、学んで成長する

– コラボダーツ会は、どのくらいの頻度で開催されていますか?

 月1~2回ですね。これまで6回ほど実施しました。現在は新型コロナウイルスの影響で休止中ですが、「きぼうの木」の子どもたちは、はやくダーツがやりたいと心待ちにしてくれているそうです。嬉しいですね。

– お子さんの参加人数はどのくらいでしょう。

 1回の開催で8~12人程度です。年齢は、小学校1年生から6年生までばらばら。上級生が下級生の面倒をよくみてくれます。

– イベントでは、どんなことをされていますか?

 初回はワイワイ、みんなで楽しく投げて遊び、まず盛り上がることを優先しました。3回目のイベントから、順番を決めて投げてもらったり、ゲームにルールを設定したり、いろいろな制約をつけた少し本格的な内容に変更しました。

ダーツカフェ ガーデン京都店で、ダーツを楽しむ子どもたち

– イベントを運営される上で気を付けていることはどんなことでしょう?

 子どもたちの様子をよく見て、困っているようなら少し待ってから声をかけることですね。すぐに声をかけて困っている原因を言い当てたり、先回りして大人が代わりにやってしまったりすると、子どもの成功体験を奪うことになるからです。

– 興味深いお話です、もう少し詳しく聞かせてください。

 例えば「チップが折れてしまって、自分では付け替えられず、困っている」という子がいるとします。そういう場合しばらく様子を見て、なかなか言い出せないようであれば「困ってるの? なんで?」と質問するんです。質問されることで、その子は「自分が何について困っているか」を回答してくれます。そうしたコミュニケーションを何度も繰り返し、最終的に「チップが折れて、自分でつけられない」と、困っている内容全部を伝えられる。まずこれが1つの成功体験になるんです。

 チップを付け替える作業も、自分でやってもらうようにしています。指先がうまく使えない子には、チップを半分くらいつけてあげて、最後の「きゅっ」と回しきるところを任せます。「自分でチップを付け替えることができた」というのも、1つの成功体験です。

 細かい道具を用意したり、順番やルールがあったり、相手を敬ったりと、ダーツにはいろいろな要素があります。発達障害などの症状を抱える子どもたちにとっては、「ダーツで遊ぶ」という中にたくさんの課題が混ざっているんです。遊びながらそれをひとつひとつ乗り越えていくことが、「療育」になっていると思って活動しています。

– ダーツで得られる成功体験や学べることについて、他にもあればぜひ教えてください。

 例を挙げると本当にたくさんありますが・・・

・ゲームをする前に相手の目を見て挨拶する
・投げる順番を守る
・ダーツをしっかり投げられる
・どうしたら狙った場所に当てられるか、考えて行動する
・折れたチップや外れたフライトを自分で付け替えられる
・ダーツを自分で取りに行く
・盤面の高い位置にダーツが刺さって抜けないとき「手が届かないので助けてほしい」と主張する
・勝ち負けがあることを知る
・悔しいことも受け入れて、気持ちを切り替える
・いろいろなことを、同時に考えながらプレイする

などがありますね。もう少し難しい課題だと、

・お金の代わりにコインを渡して、コインを使ってゲームに挑戦
(1ゲームに何コイン必要か、手元にあるコインを見て何ゲームできるか考えるきっかけづくり)

・コインを渡し、時間を区切ってイベントをする
(イベントの残り時間と、手持ちのコイン数をみて、コインの追加を頼むか止めるか自分で決めてもらう)

ということもやっています。成功体験もそうですが、そもそも算数の勉強になりますし、友達とのコミュニケーションの方法も学ぶことができます。ダーツをプレイすることで、一度にたくさんの経験が得られるのも、ダーツの魅力だと思っています。

順番を守って、ルールを守って。ダーツをしながら、子どもたちはたくさんのことを経験し、学んでいます。

ルールやマナー、社会貢献を大切に。ダーツをメジャー化するきっかけにしたい

プレイヤー、そして店舗運営者として、日々心掛けていることは何かありますか?

 心がけは3つあります。挨拶やマナーを大切にすること。人との繋がりに感謝すること。そして、自分ができることを日々意識し続けることです。意識し続けていることの中に社会貢献や、スタッフ教育、清潔で綺麗な店舗作り。それと、身なりの清潔さなども含まれますね。

 これって社会人として当たり前のことだと思うのですが、忙しいと疎かになり、意識が薄れてしまう部分だと思うんです。でもこういうことを、ダーツのプレイや社会貢献を通じてたくさんの方々に伝えることが、ダーツ界を盛り上げることに繋がっていくと考えています。

 店舗運営者としては、特にスタッフ教育の部分に気を配っています。ダーツが出来ればOK! ではなく、スタッフミーティングで徹底して話していることがあります。それは、以下の5つです。

・綺麗にきちんと掃除をする(※ここ、力入れてます!)
・制服を清潔にして、身なりを整える
・お客様への感謝の気持ちを忘れない
・お客様から頂く対価について意識する
・スタッフ同士の助け合いをおこたらない

 スタッフもそうですが、お客様に対しても、ダーツカフェ ガーデン京都店で出逢ったということは「ご縁があった」ということなのだと思っています。だからこそ、「嬉しい、楽しい!」と思って頂けることや、こちらからお伝えできることは何かないかな? と、日々意識し続けています。

 ここまで考えるのは、僕自身がダーツに感謝をしているからです。20代の頃にダーツをはじめて、ルールやマナーを学び、たくさんの方と出会い、人間として成長させてもらいました。だからこそ“ダーツに恩返しがしたい”という気持ちがずっとあって。日々意識していることを続けること、それが恩返しになるんじゃないかなと考えて、プレイヤーとして活動し、店舗を運営しています。

– 現在のお店(ダーツカフェ ガーデン京都店)には、以前にもご縁があったそうですね。ぜひ、そのエピソードも聞かせてください。

 “ダーツに恩返しがしたい”という想いから、僕はまず、ダーツマシンのディーラー業などを行っているテンフィールズファクトリー株式会社に就職しました。その時に、ダーツカフェ ガーデン京都店の店長を務めていたことがあるんです。店長を務めた後は、マネージャーや統括の仕事をするようになり、だんだん「ダーツをする」ということ自体から離れてしまいました。

 そういう状況のなか、「ダーツがしたい。プロ選手として試合に出て、もっと活躍したい!」という気持ちは強くなる一方で。一念発起して、退職。プレイヤーとして活動しつつ、自分のお店を開くことを決めました。

 お店の立地にはこだわりました。「ダーツをメジャーにしたい!」という気持ちは当時から強くあり、できるだけダーツが人目に触れて、たくさんの人にダーツを知ってもらえるよう路面店がいいと思っていました。店舗探しで悩んでいたところ、元職場であるテンフィールズファクトリーの代表・市川さんに「ダーツカフェ ガーデン京都店のオーナーとして独立しない?」と声をかけてもらい、今に至ります(ダーツカフェ ガーデン京都店さんは路面店です)。大変ありがたいことでしたし、これも大切なご縁のひとつだなと今でも感謝しています。

– たくさんのエピソードをありがとうございました! 最後に、今後の展望やスポーツダーツについてのご意見をお願いします。

 ダーツファンを増やすには、まず自分がいいプレイヤーでいなくてはいけないなと個人的に思っています。そしてそれだけでなく、ダーツはいろいろなことに活用できるんだ! ということが伝われば、もっともっとメジャーになると思うんです。

 僕がやっている「療育」の活動も含め、ダーツが社会貢献に繋がっていけば本当に嬉しいです。僕はこれからもこの活動を続けていきますし、全国でもこのような活動が活発になれば、スポーツダーツはもっともっと活性化すると思っています。

 それと、スポーツダーツの活動をする場所として、他の団体さんにも僕のお店(ダーツカフェ ガーデン京都店)を開放したいと思っています。ダーツを広める・活用する活動をしてみたい方、お子さんを連れてきてみたい方、大歓迎です。ぜひお店にご連絡ください。お待ちしています!

藤原選手の「療育」によるスポーツダーツプロジェクト。まさに「ダーツは誰でも楽しめる」という一例で、素晴らしい取り組みです。取材にご協力いただきました藤原ご夫妻、本当にありがとうございました!

スポーツダーツプロジェクト事務局では、どんどん「先輩」を紹介して、ダーツがこんなに活用されているんだ! ということをPRしていきたいと思っています。
企画の詳細はコチラ。あなたのスポーツダーツプロジェクトのご応募、随時お待ちしております!

この記事を書いた人

へんしゅうちょう

編集長に任命され、ありがたく拝命したところ、名刺をよく見たら役職名が「いぶりがっこ編集長」でした。出身地はお察しください。米がうめぇ。